事業内容 イオン源の運転

PIG型1台、ECR型2台(うち1台は重いイオンを生成できる)、小型イオン源(普及型)1台、マルチイオン用イオン源1台と、原理や特性が異なる多種多様なイオン源を扱っています。HIMACの治療運転では、イオン源からの継続したビーム供給のために、バックアップ用のイオン源も常に待機させています。一方、治療運転以外で行われる共同利用実験では、鉄やクリプトンなど各種の重イオンをパルス的に切り替えて複数のユーザーに同時に供給します。このため、イオン源の品質保持と合わせてビームの安定供給が要求され、常時その状況変化を確実に捉えた運転が必要となります。当社技術スタッフは、運転はもとより開発サポート能力面でも、その対応力を高く評価されています。

ライナックの運転

イオン源で生成された重イオンビームはRFQ型、アルバレ型の2種類の線形加速器で加速されます。線形加速器の運転においては大電力高周波発生装置による電磁波の中をイオンビームが加速されるため、その構成機器の運転位相を合理的に調整する技術が最大のポイントです。特に、高周波空洞の周波数、位相、パワーなどの性能の安定性と再現性を保持する必要があります。当社技術スタッフは、その高度な高周波技術を駆使すると共に、温度や真空などの日常的な管理を緻密に実施。さらに、長期にわたり安定的に再現性良く運転するため、トレンド情報に基づく予防的な措置など高い技術とノウハウのもと確実に実施しています。また、普及型加速器に導入されているIH-DTL型も有しており、小型イオン源との組合せで運転されます。

シンクロトロンの運転

シンクロトロンは上下2層構造で、2台のシンクロトロンを用いて、複数の重イオンを異なるエネルギーで同時に異なる利用コースに供給します。 これにはそれぞれのシンクロトロンを周期的に同期させる複雑なタイミング制御が必要となります。ビームの制御においては、線形加速器から入射されたビームをシンクロトロンの中心を周回させつつ必要なエネルギーまで加速させ、シンクロトロンからビームを取り出す際には、ビームサイズや安定性にまで配慮する必要があります。当社技術スタッフは、治療ビームを供給するための高度で幅広い技術対応能力で、シンクロトロンの運転に応えています。

治療照射室/実験室へのビーム輸送

ビームラインはその構成機器も多く、運転パラメータも多様です。HIMACのビーム輸送系は、ビームを上シンクロトロンから3つの治療照射室や生物用実験コースへ、下シンクロトンから物理及び生物用実験コースへ輸送します。 当社技術スタッフは、ビームトランスポート理論に基づき、ユーザーから要求されるビームサイズ、強度を実現するビーム輸送ライン電磁石の最適パラメータの算出、実践が可能です。品質保証においては、ビームの測定やそれらを解析することによって治療計画で立案された治療の照射パラメータの確認を行っています。また、ビーム照射位置の精度を保つため、照射装置や照射位置を決めるための関連機器(寝台やX線機器など)の点検と管理を行っています。

治療計画支援

重粒子線治療は炭素イオンによりがん細胞のDNAを断ち切り、新たな分裂、増殖を阻止します。しかし、重粒子線は正常な細胞にも同様の影響を与えるため、がん細胞への正確な照射が必要不可欠となります。この正確な照射を叶えるために用意されるのが、治療計画です。放射線治療では、放射線科医の指示に従い治療計画を立案します。治療計画はまず、患者一人ひとりについてCT画像により三次元的に腫瘍の位置・大きさ・形状を確認します。次にこの画像データをもとに照射領域を決定し、患部に対して適切な線量・照射角度を設定して、線量計算を計算機で行います。この作業により加速器をはじめとした放射線制御機器の設定が作成され、患者に適したオリジナルの治療計画が完成します。治療計画で使用する基礎データや、治療の品質を保つための線量の測定では、長年にわたり蓄積された加速器エンジニアリングの技術が発揮されます。また治療計画支援業務では医師との連携により、新しい放射線治療の取り組みにも貢献しています。